光
色褪せない思い出は財産だと思った
記憶のみに残るものはいずれ忘れてしまうかもしれないけれど、何かを見て聞いて感じて触って思い出したときの温度は年月が経つにつれてあたたかみを増す
記憶はいい加減でうそもほんともなくて、たとえ幻想だとしても、わたしはそれが嬉しくて幸せで、たまに取り出すと戻れないさびしさとともに心が満ちてゆく感覚
写真に残して、そこに写るものは現実
夢でもないし幻想でもない
だれかが写真は忘却の手段といったけれど、なんとなくイメージがつかめきた気がする
現実を写し続けたらすこしはわかるようになったこと
今に続いて、結びつかないもの
星が瞬く空を見上げながら交わした数え切れないほどの会話を反芻する
目の前を過ぎ去るテールランプを夢中で追いかけた
写真に残らなかったものは塵となり昇華されて記憶のうみのなかで瞬く光の粒
掻き集めて抱きしめて目を閉じて覚まして、ふたたび流れる時間に身を任せる
きれいなものもきたないものも全部ぐちゃぐちゃになったら、命が生まれる
絶えず繰り返される中で育まれて、継がれてゆくものを眼差す目の美しさ
目に見えるものに怯えている暇はない