会いたい

腕の間をするりとすり抜けていく

うしろすがた

かっこいいと思った

 

その勢いで生じた風に

よろめいたぼくは

足場をみうしなって

死を予感したのも束の間

舞っている埃に光があたって

きらきら輝いているのを

太陽が沈むまで眺めた

 

やがて光のない夜がくる

へっぴりごしで手探りで前にすすんでいると

ぬくもりのあるものにぶつかった

ふかふかでおそらくぼくよりも

背丈があるそれは

安心の温度だった

すぐさまぎゅっと握りしめて

すこしずつ身を預けて

そこで一晩を過ごした

 

目に刺さるような朝日で目を覚ますと

となりにはもうなにもなかった

 

きのうとおなじきらきらをみるために

手足をばたつかせて埃をたてようとするけれど

一向にみえなかった

日がすこしずつ落ちてきて

目の前は青で埋めつくされた

なだらかなグラーデーションになっていた

その青をじっとみつめるうちに

また足場のないことを思い出して

「おーい」とさけんでみる

心臓にひとすじ

すーっとひかれた線から

空気がどんどんこぼれていく

これをさみしいって言うらしいね

 

針と糸を探すために

ぼくはさらなる深い青に身をゆだねた